態度や表情で攻撃! 職場での『サイレントモラハラ』に注意!モラハラとは『モラルハラスメント』の略で、モラル(倫理観、道徳)に反した言動や態度で相手の人格や尊厳を傷つける行為を指します。 そして、言葉を発さずに、態度や表情、行動で相手を追い詰めるのが『サイレントモラハラ』です。 サイレントモラハラは言葉や暴力による攻撃ではないため、表面化しづらいという特徴があります。 しかし、サイレントモラハラを放置していると、被害者が精神的に追い詰められ、休職や退職してしまう可能性があります。 従業員を守るためにも、サイレントモラハラの防止策を学んでおきましょう。 無言で相手を追い詰める、モラハラの一種 『モラルハラスメント(モラハラ)』は言葉や態度などで、相手を精神的に追い詰めるハラスメントです。 一方、『パワーハラスメント(パワハラ)』は、優位な立場を利用し、業務の範囲を超えて、相手を精神的または肉体的に追い詰めるハラスメントを指します。 そのため、同じ行為がモラハラとパワハラの両方に含まれることもあります。 たとえば、上司からの「役立たず」「早く辞めろ」など、相手の人格を否定するような発言は、モラハラであり、パワハラの6類型あるうちの一つである「精神的な攻撃」にも該当します。 パワハラとモラハラの大きな違いは、優位性の有無です。 パワハラが上司から部下など優位的な関係に基づいて行われるのに対し、モラハラは優位性を問わず、夫婦間や同僚間など、本来は対等な関係であっても発生します。 暴力などで身体的な危害が加えられるわけではないため、ただでさえ発覚しづらいモラハラですが、さらにやっかいなのが『サイレントモラハラ』の存在です。 言葉に出さずに相手を攻撃するサイレントモラハラは、実態が把握しづらく、パワハラやセクハラ、モラハラなどよりも表面化しづらいハラスメントといわれています。 では、どういった行為がサイレントモラハラになるのでしょうか。 たとえば、何を聞かれても一切答えない、挨拶に応じない、目を合わせないなどの「無視」、大きな「ため息」や、繰り返しの「舌打ち」、無言の「にらみつけ」、不機嫌な「表情」や「態度」などは、すべてサイレントモラハラに該当します。 また、相手に聞こえるような大きな声で、不平や不満をこぼす「独り言」もサイレントモラハラといえます。 ほかにも、実際の職場で報告されている例として、会議の内容など業務上必要な情報を共有しない「情報の非共有」、職場のイベントなどに呼ばない「集団での排除」などがあり、意図的にこれらの行為が行われることで、業務に支障をきたすおそれもあります。 サイレントモラハラは、いわゆる無言の嫌がらせのことで、態度や表情だけで相手にプレッシャーや緊張感を与え、萎縮させます。 被害者は次第に孤独感や劣等感を抱くようになり、最終的には休職や退職へと追い込まれていきます。 立証がむずかしく、被害を自覚しづらい パワハラやセクハラなどと同様、サイレントモラハラも絶対に許してはいけない行為であり、企業としては、すぐに何らかの対策を講じたいところです。 しかし、サイレントモラハラは言葉や行動が伴わないため、立証がむずかしく、被害者自身もサイレントモラハラの被害者であることを自覚しづらいという特徴があります。 「過敏になっているだけかもしれない」「機嫌が悪いのは自分に落ち度があったからだろう」などと考えるサイレントモラハラの被害者は少なくありません。 このように、被害者が第三者に相談せず、問題を自分の心に秘めてしまうことがサイレントモラハラの大きな問題点といえます。 サイレントモラハラを防止するためには、まずはどういった行為がサイレントモラハラに該当するのか、全従業員に周知を図り、被害者がいれば「自分は被害者なんだ」という自覚を促すことが大切です。 そのうえで、被害者が周囲に相談したり、声をあげたりしやすい環境づくりを行なっていきましょう。 具体的には、定期的な面談の実施やハラスメント相談窓口の設置などで、被害者の声を拾えるようにしておくことが重要です。 被害者がみずから申し出るには勇気が必要で、諦めてしまうこともあるため、第三者が匿名で通報できるような制度の整備も行わなければいけません。 匿名のアンケート調査やメールフォームなどは、被害者はもちろん、サイレントモラハラの現場を目撃した第三者が通報しやすい取り組みの一つです。 自身の周囲でサイレントモラハラが疑われるような状況があれば、随時書き込んでもらいましょう。 サイレントモラハラはとても陰湿で悪質性の高いハラスメントです。 特に上下関係に厳しい職場やコミュニケーション不全の起きている職場で発生しやすいといわれています。 もし、複数人の通報や証言などで、サイレントモラハラが実際に起きていることが明確になった場合は、加害者の処分も考えなければいけません。 防止措置が事業主の義務となっているセクハラやパワハラと同様に、サイレントモラハラが起きないような防止措置を講じていきましょう。 仕事と育児の両立支援の取り組みを推進! 子育てパパの育休取得を支援『両立支援等助成金』は、仕事と育児・介護などの両立支援に関する事業主の取り組みを促進し、労働者の雇用の安定を目的としています。 6種類のコースがあり、今回取り上げる『出生時両立支援コース』は別名『子育てパパ支援助成金』とも呼ばれています。 このコースは男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、育児休業を取得した男性労働者が生じた事業主に支給します。 両立支援等助成金出生時両立支援コース 男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備・業務体制整備を行い、子の出生後8週間(子の出生日当日を含む57日間)以内に一定日数以上の育児休業を開始した男性労働者が生じた中小事業主に対し、支給されます。 【支給対象事業主】 本コースは中小事業主のみが対象の助成金です。 中小事業主の判定は、支給申請日の属する月の初日における資本などの額、もしくは企業全体で常時雇用する労働者の数によって行われます。 【主な支給要件】 (1)育児・介護休業法の定める水準を満たしており、育児休業に係る手続きや賃金の取り扱いなどについて、労働協約または就業規則に規定され、対象となる男性労働者の育児休業においても、その規定する範囲内で運用していること。 (2)次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、労働局長に届け出を行い、また「一般事業主行動計画」の公表、労働者に周知させるための措置を講じていること。 (3)次のうちいずれか2つ以上(※)の雇用環境整備措置を、対象労働者の育児休業開始日の前日までに行なっていること。なお、第一種の申請において対象人数が2人目の場合は3つ以上、3人目の場合は4つ以上の措置を行う必要があります。 ・育児休業に係る研修(労働者向け)の実施 ※出生時育児休業(産後パパ育休)の申し出を、労使協定において2週間以上前までとしている事業主は、上記措置を通常要件に加えて1つ以上行う必要があります。 【種類と支給額】 ■第一種(男性労働者の育児休業取得) 男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する一定日数(本助成金においては、育児休業中に労働者が就業した場合は、就労日については育児休業日数にカウントしません)以上の育児休業を取得した場合に、次の額が支給されます。 1人目:5日(所定労働日4日)以上→20万円 1人目について、雇用環境整備措置を4つ以上実施の場合は30万円が支給されます。 なお、第一種の申請日前に、男女別の育児休業の取得率および平均育休取得日数を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合には、2万円が加算されます。 ■第二種(男性の育児休業取得率の上昇等) 第一種を申請済の事業者が対象で、男性の育児休業の取得率が上昇した場合に、次の額が支給されます。 例:第一種申請時事業年度において取得率が10%だった場合、40%以上になることを30ポイントの上昇とします。 1事業年度以内:30ポイント以上上昇→60万円 ※第一種の申請年度に子が出生した男性労働者が5人未満、かつ育児休業取得率が70%以上の場合で、第一種申請年度の翌年度、翌々年度の2カ年連続して70%以上となった場合も可能です。 なお、第一種の申請にかかる男性労働者の育児休業期間の終了日までに、事業主がプラチナくるみんの認定を受けている事業者には、第二種の申請において15万円が加算されます。 【申請手続き】 支給申請書および添付書類を、それぞれ下記期間内に提出します。 第一種:育児休業の終了日の翌日から起算して2カ月以内 主な添付書類は、労働協約や就業規則、雇用環境整備措置を確認できる各種資料、対象労働者の育児休業取得が確認できる出勤簿や賃金台帳などの資料です。 【おわりに】 近年、男性の育児休業に関する法改正も頻繁に行われ、男性労働者の仕事と子育ての両立を応援する企業が増加しています。 育児介護休業に関する会社規程の見直しを行う、育児休業の取得に対応する社内の体制整備を行う、一般事業主行動計画の策定を行うなど、総合的に雇用環境の整備に取り組むことで、労働者が仕事と子育てを両立させながら安心して働き続けることが可能になります。 本助成金の申請を視野に入れて、雇用環境を整備する取り組みの実施や、法改正に伴ったアップデートができれば、非常に好循環となるでしょう。 |