不動産の評価額は取引価格よりも低く計算される
一般的に資産運用は、1預貯金、2株式、3不動産の3つの資産に分散させて投資する
のが望ましいといわれます。近年は、ドルやユーロなど海外の投資商品や不動産投信も登
場し、その方法は多様化しています。
相続税は亡くなった人の財産に課税されます。そして、課税される相続財産の評価額は
相続時の財産の評価額になります。
「3大財産」と呼ばれる、これら預貯金、株式、不動産それぞれがどのように評価される
のか、見てみましょう。
預貯金・株式・不動産の評価
1預貯金
預貯金の預け入れ高+既経過利子―源泉徴収額
2株式
上場株式の場合、以下の1~4で最も低い額
1相続時の終値
2相続時の月の終値の平均額
3相続時の月の前月の終値の平均額
4相続時の月の前々月の終値の平均額
上場していない会社の株式の場合、以下の方式のうち当てはまるもので評価
1原則的評価方式
類似業種比準評価方式、純資産価額方式または併用方式
2例外的評価方式
配当還元方式
3不動産(土地)
路線価方式または倍率方式で算定した評価額
預貯金と株式は実際の取引価格に近い金額が評価額になりますが、不動産は多少異なり
ます。不動産の評価の計算に使われる路線価は、一般的には公示価格の80%になるように定められています。
利用の形態によってはさらに評価減になる場合があります
さらに不動産は、その利用形態に応じて、次のような評価上・税制上の特典があります。
1自分で利用する場合
「居住用小規模宅地等の評価減」(特定居住用宅地は330㎡まで80 %減)
2収益用に利用する場合
「更地評価から貸家建付地の評価減等一定の評価減」
「事業用小規模宅地等の評価減」(特定事業用宅地は400㎡まで80%減)
「建物評価から貸家の評価30%減」
例えば、「相続税対策にはアパートなどを建てたほうが得」ということがよく言われま
すが、これは賃貸物件と建物の土地(貸家建付地)に対しては、更地よりも評価が下がる
ようになっているからです。
土地の評価額は路線価方式などで計算した価格と述べましたが、建物の評価額は、「固
定資産税評価額×1・0」で計算された額になります。
アパートや貸家などを建てると、その建物については、他人の居住用であるため、借家
権のついている建物として30%の減額計算が行われ、これは全国一律の割合です。式で表
すとこうなります。
アパート、貸家の建物の評価額=固定資産税評価額×1・0×(1-30%)
例えば、固定資産税評価額が2000万円の建物を相続したとすると、2000万円×1・0×(1-30%)
となり、相続税法上1400万円の評価となり、2000万円-1400万円=600万円分、建物が低く評価されるわけです。
評価減は、建物だけではありません。アパートや貸家の土地も、他人が居住している建
物の敷地「貸家建付地」とみなされて、更地評価額から、借地権割合と借家権割合(30%)
を乗じた率を控除して、計算されることになっています。
アパート、貸家等の敷地の評価額=更地の評価額×(1 -借地権割合×借家権割合)
例えば路線価で2億円の価値のある更地に、借地権割合60%、借家権割合
30%のアパートを建てた場合の土地の評価は、2億円×(1 -0・6×0・3)=1億6400万円、と
なります。借家権割合は全国一律30%ですが、借地権割合は、土地によって変わるので、
路線価図を見て確認し、計算してみましょう。
このように不動産には、貯金や株などの金融資産に比べ、評価方法や用途に応じたさま
ざまな特典があるのです。
その一方で、換金に時間がかかるというマイナス面があることも認識しておかなければ
なりません。