●会社は競争にさらされる存在
社長さんに、どれくらい儲けたいですか、と質問すると「儲からなくてよい。好きな仕事ができて、赤字がでなければそれでよし」というような呑気な発言を聞くことがあります。あるいは「できればたくさん儲けたい!」という元気な人もいます。「では、いくらくらいですか?」と質問をすると「たくさんだよ!」と返ってきます。「じゃあ、いつまでに?」「なるべく早く!」こんな無計画な考えでは、会社は継続できないし、「儲からなくてもいい」程度の考えでは、会社を潰してしまいます。
あなたの会社で提供される商品やサービスは、特許や実用新案の通った「唯一のもの」ではないでしょう。とするならば「すでに先行している他社やお店との競合に勝つ必要」があります。
つまり、競争に勝つには、出ていくお金は少しでも減らし、入ってくるお金は少しでも多くもらう、そしてそのお金を新たな仕入れなどの投資に回し、残ったお金は社内に留保して、いざというときのためにプールし、会社の体力を強化しておかねばなりません。これら一つひとつを、社長として実行していくというのは、本当に大変なことだと思います。
ですが、よく考えてみてください。「たいして儲けなくてよい」とか「とりあえずたくさん儲けたい」――という程度の考え方では、潰すために会社をつくるようなものです。会社を潰して喜ぶ人はいるでしょうか。いないはずです。会社をつくるときに、本気で潰れた状態を想像してみてください。何百万円、何千万円の借金を返していくというのは本当に大変なことなのです。
また、会社が潰れるというのは、本当にみじめなものです。日本では、悪い想像をすると「縁起が悪い」と嫌がられますが、起業家と言うのはつねに「転ばぬ先の杖」をもっておく、最悪の状態を想定しておく、ということが大切です。
●社長にとってお金は命と同じくらい大切なもの
あるとき、私の知り合いの社長が、上手に商品を販売して、工場をフル稼働して売上をアップさせていったことがあります。ところが、数字上は黒字なのですが、お金がショートしてきました。すぐにでも借入をおこしたい。なぜなら、振り出した手形の決済日が近づいて預金にその1000万円の残高がないからです。間違えば不渡り、すなわち倒産です。そのとき本気で自殺しようかと思ったそうです。
命は大切です。命は大切ですが、経営者になれば、命以上にお金を大切にしなければならないということです。そして薄情にも、日々の友人や家族との会話のなかで「近くに新しいラーメン屋ができたな、いったいいつまで潰れずにもつか」などと話している人を見たことがあるでしょう。
とくに飲食店はだれでもすぐにスタートできる反面、潰れるのも早いのです。これらの店を潰してしまう人たちに共通しているのは「お金の見通しについて甘い認識をもっている」ことにつきる、と思います。
出典:社長にとっていちばん大事な「お金」「売上」「経費」がらくらくわかる本
運営:記帳・経理代行実務研究会