”いい税理士”社長の勘違いPart4
「記帳代行する・自社でやる」は関係ある?
記帳業務とは、領収証や通帳のコピー、請求書などから、会計帳簿を作成することです。
記帳を税理士事務所に頼むことを記帳代行と言います。この記帳を税理士事務所に頼むのがよいのか、
自社でやるのかどちらがいいのかと言えば、これは会社の成長度合いによって変わってきます。
起業したときの社長というのは、前職でほとんどの人が『営業のプロ』 、もしくは『技術のプロ』であった場合が多いと思います。
だからこそ、起業というひじょうにエネルギーのいる行動が起こせたわけです。
起業した社長が『経理のプロ』であったというケースはとてもまれだと思います。
ですから、創業時は税務のことはもとより、会計のことすらわからずにスタートしているので、正確な記帳などは税理士の指導のもと、
行っていったほうが良いでしょう。
会社の創業時というのは、どんな会社でも、キャッシュが少ないものです。
そこで、できれば税理士報酬を少なくしようと思い、記帳の作業を専門の安い代行業者に頼んだり、自分で会計ソフトを買ってきて
済まそうとしますが、これらは両方、うまくいかないことが少なくありません。
無資格の記帳代行業者は、たしかに料金が安いのは事実です。
ですが、彼らは最終的には何の責任ももってくれない、ということを知っておいてください。
記帳の代行業者に作成してもらったデータをもとに自分で申告書を作成して税務署に提出しても、申告書に「税理士のハンコはない」のです。
また、一方で自分で会計ソフトを買ってきて入力する場合、あなたは正確に勘定科目に分けることができるでしょうか。
とりあえず、貸借を合わせて入力すれば、それらしい試算表はできあがりますが、形ばかりの計算表で中身の薄いものになる可能性が高いと思われます。
購入したものが消耗品費になるのか、もしくは広告宣伝費になるのか、はっきりとしないまま打ち込んでいくしかありません。
「いいじゃないか、自分で記帳して申告しても。会社を設立して3年後までは税務署は来ないと聞いているぞ」
という社長さんがいますが、税務署は会社を設立してたとえ1年目でも、来るときは来ます。
それに、「税理士のハンコが押していない申告書」というのは、申告書をチェックしている税務署署員からしてみれば、
この申告書は税理士のハンコが押してないぞ。これは税務調査でたくさん誤りがあるのでは?」と思われているかもしれません。
たとえは悪いかもしれませんが、税務署からしてみれば、「税理士のいない会社」なんて「弁護士のいない犯罪被告人」みたいなものでしょう。
税理士のハンコには、「この会社の申告書は私がチェックして責任をもって作成しております」という意味があり、
税務署に対して確実に1つの信用となるのです。
会社の起業時は、申告や税務署対策の面からも、記帳代行業者や会計ソフトだけに頼るのではなく、税理士に指導を仰いで、
会計的な心配をせず本業に邁進したほうが得策です。
そしていずれは、会社の規模が大きくなるにつれ、経理専門の人員を雇わねばならなくなります。
それぐらいまで、税理士に自社内に経理の面倒を見て置いてもらうと、ノウハウが蓄積されてくるので、
自社だけで記帳作業と月次決算ができるようになってきます。
記帳代行する・自社でやるという選択は、会社の規模や目的に応じて変化するということを覚えておいてください。
そして、最終的には記帳は自社でできるようにという目標をもって、日々の業務に注力するのがよいでしょう。