なぜ8割の社長が「うちの税理士は物足りない」と思うのか? Part12
社長は税理士を”活用”しなければならない その2
出版社の例を挙げて説明しましょう。
毎年、黒字決算をしている出版社での出来事です。
ある経営書がベストセラーとなり、10万部売れました。
さらに書店から10万部の注文が来ている。「これはいけるぞ!」そう思った社長は、さらに10万部印刷をし、印刷代、著者への印税などを支払い、手持ちの現金をほとんど使い果たしてしまいました。
書店で売れた10万部の売上は、卸を経由してくるので”半年後”となります。
資金的には苦しいが、書店からの注文を無視するわけにはいかない。
あとは、追加の10万部が売れてくれれば大丈夫だろう……」そう思って4カ月が経ちましたが、結果は惨憺たるものでした。
追加で入れた10万部は急に売れ行きが悪くなり、なんと9万部が返品されてきたのです。
残ったのは在庫の山。
追加の印刷代と著者への印税支払いなどで、手持ちの現金は底をつき、卸からの入金を待たずして、黒字のまま倒産してしまったのです。
この出版社は、大切なことを勘違いしていました。
それは、経営に一番大切なのは売上だと思っていたことです。
この例をみてもわかるように、大切なのは売上以上に『キャッシュフロー』です。
こうした出版社の例は、他業種にも起こり得ることです。
これは税理士と一緒に、月次決算をしっかりして、資金繰り表をつくれば、かなりの確率で防ぐことができます。
そして、年に一度決算書をもとに、資金状況や収益性、そして成長性を過去の決算データと比べて、現状を把握します。
これが決算カウンセリングなのです。
税理士は、営業の指導など、売上をあげる直接的なお手伝いはできないかもしれませんが、少なくとも将来の資金繰りを社長と一緒に予想し、会計や税務上で、的確な手を打ったりアドバイスをしたりすることはできるはずです。
「うちの税理士、もの足りない——」
あなたがそのように感じているのならば、いまの顧問税理士に手早く見切りをつけるか、いまの顧問税理士の方としっかりとコミュニケーションをとっていくかの選択を迫られていると言ってよいでしょう。
※このコラムは「社長のための”いい税理士”の探し方」をエッセンシャル版としてお届けするものです。