なぜ8割の社長が「うちの税理士は物足りない」と思うのか? Part4
“社長と税理士のボタンの掛け違い”が会社を不幸にする その2
その1に続き、もう1例、挙げましょう。
たいへんまじめな税理士Bさんは、ある事件を境に、顧問先の田中社長から「B先生は、会社をつぶす気か」と不信感をもたれてしまいました。
田中社長に、ふだんのBさんの態度についてお話をきいてみても、まじめで礼儀正しいのにもかかわらずです。
事件は第11決算期に起きました。
会社設立から10年連続増収増益で、なんの問題もなく伸び続けてきた田中社長の会社の売上がはじめて横ばいに転じたのです。
売上は横ばいでしたが、増加を見込んでの設備投資を毎年行っていましたから、決算をしてみると赤字となっていました。
それまで経営数字はB税理士に任せきりで、数字に無頓着だった田中社長は「そうか、今期は赤字か。B先生が出してくれた数字だ。間違えなないはずだ。仕方がない、来期で取り返そう」と再起を誓い、そのまま取引銀行に赴きました。
そして担当の融資課長に言いました。
「今年は赤字決算なんですけど、来期は景気も回復し、売上が伸びそうです。昨年同様に融資をお願いできますでしょうか」
すると、融資担当課長の顔が曇りました。
「社長のお話はよく理解できます。私も個人的には融資したいです。ですが、当行の今年の方針としては、なかなか赤字企業に対して融資の許可がおりないんです。どうかご勘弁を……」
「10期連続で増収増益を続けている優良企業なのに、いったいどうして銀行は融資してくれないんだ」と友人に相談したところ、「赤字額はいくらだ。なに? たった500万円だって。それなら、減価償却とか前払費用とか、いくつかの経費を計上しなければ、赤字にならなくて済んだんじゃないの? どうしてそんな簡単なことを税理士が教えてくれなかったんだ。うちの顧問税理士なら、そんなこと決算前に教えてくれるぞ」と指摘され、B税理士に対して疑念がでてきました。友人はさらに「銀行だって、そんなことは承知しているさ、融資担当課長にだって、ノルマはあるんだ。帳簿上さえ辻褄があって黒字になっていれば、これまでどおり融資してくれる。万が一、融資先が経営破綻しても、『決算書で前記は黒字でした』と上司にいえば責任を問われなくて済むだろ」
「・・・・・・」
このケースにおいても、私はすべてB税理士が悪いとは思いません。
なぜなら、田中社長は創業当時、親戚から知り合いのB税理士を「まじめで不正をしない税理士」として紹介してもらい、少なからずも10期連続でまじめに決算してくれているBさんのことを評価していたからです。
一方のBさんも「まじめに額面通りの決算書を作れば、田中社長は評価してくれるし、顧問契約も継続してくれるはずだ」と毎年、毎年、業務を継続しながら、その思いを強くしていたからです。
社長と税理士のボタンの掛け違いーーーーじつはこれが、「なぜ社長の8割は『うちの税理士、もの足りない』と思うのか?」の答えなのです。
このような悲劇をなくすためにも、経営者は税理士にたいして、何を望んでいるのか、これを自らに問い続け、常に明白にしておかなければなりません。
これが明らかになってはじめて、自分の会社にとって必要な税理士が”見つかる”のだと思います。
※このコラムは「社長のための”いい税理士”の探し方」をエッセンシャル版としてお届けするものです。