「消費税」への甘い認識が修正申告を招く
介護事業は、2000年4月はじまった介護保険制度をもとにした施設サービス、在宅サービスの総称です。
そこで、新たなビジネスチャンスの到来を予感した人たちが、次々に介護事業に参入していますが、数年前に最大手のコムスンが破たんしたように、この事業特有の難しさというものが存在するようです。
介護業界がほかの業種と違う点は、売上のほとんどが非課税だということです。
さらに、経営者1人とヘルパー数人で、家賃は数百万円以下のテナントを借り、独立開業したという事業所の場合、年商が1,000万円に到達していないことも多く、税に対する認識が希薄なケースが多い様です。
しかし、上乗せ給付(介護保険の対象外)や、介護保険以外のサービスを行ったり、福祉用具を販売したりした分については、しっかりと課税対象になります。それゆえ税理士はいらないと考えている人でも、将来年商1,000万円を超え、さらに業務を拡大していきたいのであれば、課税売上に対して、税理士とともに売上台帳の作成や入金管理、管理会計などを行う必要があります。
消費税に関しては、介護事業の経営者が意外に詳しくないところなので、見落としがちなポイントを挙げておきます。
- 介護サービスの延長線上で、利用者が過度に贅沢な食事や居室などを要求したときの費用
- 通常の事業地域以外からヘルパーを呼び寄せ、訪問介護・入浴介護を行った場合の交通費、送迎費用、特別な浴槽水等の費用
- 利用者の自費にて、訪問介護で身体介護が行われた場合の費用
- 身障物品に該当しない福祉用品の販売分の費用
- 介護タクシーのメーター料
税務署が指摘する「源泉所得税」と「介護保険の未収金」
つぎに税務署から指摘されやすい点を2つご紹介しておきます。
1つめは、ヘルパーさんの源泉所得税についてです。
ヘルパーさんの年収が103万円未満だから、源泉所得税を払わなくていいというのは、間違いです。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していなければ、月8万5,000円程度の月給で2,000円強の源泉所得税がかかってきます。
会社が損をしないためにも、「入社時には必ず『扶養控除等(異動)申告書』を提出してもらってからヘルパー業務をはじめてもらう」と規定を設けておきましょう。
2つめが、介護保険の未収金の計上です。
これは、1ヵ月分ではなく、2ヵ月分計上しておかなければなりません。税務署から計上漏れの指摘を受けると、法人税などの本税が増額するほかに、加算税や延滞税が追徴課税されてしまいます。
これらのポイントに加え、普段から準備しておくべきことがあります。
「売上台帳の作成」です。
介護事業では、利用者への介護サービスだけではなく、業務日誌や送迎記録などの事務的な業務が多く発生します。自治体の実地指導もあります。
「日常業務に忙殺されて売上台帳どころではない」という経営者の方は多いと思いますが、会社として成長するためには「売上台帳の作成」は欠かせません。
売上台帳の作成によって、国保連への保険請求、利用者からの振込など入金管理面が明確になり、経営方針や売上目標の設定が一層わかりやすくなるはずです。
顧問税理士と相談のうえ、しっかりと基準をつくって作成するよう努めてください。