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6.運転資金が増えていく「増運の会社」、運転資金が減っていく「減運の会社」、その違いとは

●決算書に「前受金」があるか

 突然ですが、会社には二種類あるということをご存知でしょうか。有限会社と株式会社ではありません。「運」という観点から見た場合、会社には「増運の会社」と「減運の会社」があるのです。これは、いわゆるラッキーであったり、ツキのあるなしのことを言っているのではありません。ここでいう「運」とは「運転資金」のことです。ですから

運転資金の増えていく会社=増運の会社

運転資金の減っていく会社=減運の会社

 と、私は呼んでいます。減運の会社は、仕事を受けたら受けただけ、商品を販売したら販売しただけ、お金がなくなっていく会社です。業種として陥りやすいのは、経費だけが先に出ていく会社です。たとえば、建築や工事関係の会社は、手形をもらうことが多い業種です。

 90日、半年という期限で手形をもらえば、大変です。その間に、原材料や人件費がどんどん出ていきます。工事が完了するまで全額がもらえないと、へたをすれば倒産の憂き目にあってしまいます。

 最近では、ホームページの制作会社等がこの類に入ります。どうしても大きい受注をしたくて大企業相手の仕事を無理をして受けて、手付金や中間金をもらわないで、資金繰りに行き詰って、減運の会社になってしまいます。

 逆に増運の会社は、どのような特長があるのでしょうか。それは決算書に「前受金」「預り金」という項目がある会社です。すでにお客様からお金をもらったけれども、現時点では売上計上しなくていい金額が「前受金」。取引先から預かった営業保証金など、金額返金予定のお金が「預り金」です。前受金や預り金がないと、すでに減運のスパイラルに陥っている会社だと自覚しなければなりません。

 私の知り合いの木工会社の社長がいます。その木工会社では、下請けで室内の一部分の内装をてがける会社で、工事代金は工事完了時に全額でもらうというスタイル――紛れもなく減運の会社でした。

 その会社の社長が、「なんとかせねば」との思いにかられたようで、お客様に対して勇気を持って前受金をもらうようにお願いするようにされたのです。最初は嫌な顔をされる取引先もありましたが「いい工事を行うためには、代金の1/3~1/2は前受金としていただくことになっています」と自信をもってお客様にお願いするようになってから、それまでは仕事をすればするほど会社のなかからキャッシュがなくなっていたのが、お金がどんどん舞い込んでくるようになったのです。

 実は、前受金ビジネスで事業をのばしているところはたくさんあって、チケット販売というのもその手法の一つです。

 例えば、脱毛美容は女性の間では常識になってきましたが、いちいち体毛をそるのは面倒だからレーザー脱毛をやりたいと思ってお店に行くと「一回ですべて脱毛できるわけではないので、チケットを購入してはいかがですか?」とすすめられたりします。それが会計処理上は、前受金となり、使った分のみが売上となるため、多くの資金が会社の金庫で預金にかわるわけです。

 こうしたビジネス手法は、多くの会社がはじめ、ホワイトニング、エステ、英会話と大流行です。前受金というのは非常に使い勝手のいいお金で、一部をのぞき、先行投資に使うことが出来ます。英会話のNOVAもその一つでした。NOVAのシステムを思い出してください。生徒からは半年分、一年分の授業料を前受金としてもらうのです。それを使って、どんどんと新設校を作っていき、業界トップクラスの企業にのぼりつめたのでした。

 とはいえ、あくまでも前受金は、まだ売上にならないということは、いつでも返金できる状態を保っていなくてはならないともいえます。このお金をあてにしすぎると思わぬ落とし穴に落ちてしまう危険もはらんでいるので要注意です。

 いずれにしても、ちょっとした工夫で前受金をもらうようにすると、減運の会社が増運の会社に変化することができます。

 起業後一年以上経つ読者の方は、皆さんの会社の決算書に「前受金」という項目があるかどうか、調べてみてください。

出典:社長にとっていちばん大事な「お金」「売上」「経費」がらくらくわかる本
運営:記帳・経理代行実務研究会

 

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